夜。
目が覚めると、隣には必ず諒がいる。
いつも添い寝をしてくれたのは兄だったのに…。
そう考えて、ふと目が覚めた理由に思い当たった。
「また…兄さんの夢を見てたんだっけ」
気がつけば頬も枕もしっとりと濡れていた。静かに涙を流しながら見る夢は、たわいないリビングでの様子だったり、3人での外出のシーンだったり…胸を鮮血に染め、息絶える兄の姿だったりする。
総一郎は暁人が夜中に目を覚ますと、必ず自分も目を覚まして声を掛けてくれていた。
諒はぐっすりと眠っているようだったが、諒の中にある兄の魂は…もう暁人の気配を感じているはず。
起こしたくはないと思ったが、そっと諒の首筋に顔を寄せた。
兄とは少し違う香りに包まれて、闇の中静かに待っている。
きっともうすぐ…優しい声が掛けられる。
「どうした、暁人?」
そうして大きな手が頬をなぞり…ゆっくり背中にまわされる。
「…恐い夢でも見たのか?」
眠りを誘うように背を撫でながら、耳もとに囁かれる言葉…。
「俺が傍にいるから、安心してお休み。…暁人」
……僕はいつまでも、あなたを待っている。